2008年 12月 29日
年の瀬も迫り、毎年この時期に書く年賀状。 年賀状をやりとりしている人の中には、旅先で出会った人も多い。 今日は、年賀状を書きながら思い出した、そんな事について書いて見たいと思います。 今から遡ること11年前、就職した年の初めての夏休みに、ライダーの聖地とも言える場所である憧れの北海道へバイク旅に出かけた。 10日間の旅を終え、まだまだこの地を離れたくない後ろ髪惹かれる思いで、帰りのフェリーターミナルの十勝港に到着すると、まだ少し時間が早いからか、周りにはほとんど人の姿が見えなかった。 いや、人だけではなく、港には乗るはずのフェリーもまだ到着していなかった。 なんだろうとフェリーターミナルの入り口を目指すと、そこに一枚の貼り紙をガラス戸に貼ってあるのを見つけた。 「本日のフェリーは、台風の為欠航しました。」 一瞬その貼り紙を見たときには、「あれ、何で今頃こんなの貼ってあるんだろう?」と思っていた。 確かにニュースでは2日程前に台風が関東地方に上陸したというニュースを見ていたのだが、ここ北海道には影響も無く、今日は天気も良い。 そこで窓口に行き、今日のフェリーの事を聞いてみると、やっぱり「今日のフェリーは欠航です」という答えが返ってくる。 というのも、東京から出るはずのフェリーが台風の影響で欠航になってしまったからだった。 そこでやっと気がついた。 東京から北海道まで、フェリーに乗ってくるとなんと30時間もかかる。 2日程前の台風のために、今頃台風とは何にも関係のないこの北海道にまで影響を及ぼしてしまったのだ。 窓口のお姉さんはすまなそうなそぶりも全く無く、「次の便は2日後ですけど、どうされますか?キャンセルしますか?」と聞いてくる。 確かに天候のせいでは仕方ないものの、明日には東京へ帰らないと翌日の仕事に間に合わない。 一瞬思考が飛んでしまったが、このまま帰るのは辞めて北海道をもっと走るか!というわけにもいかず、どうやって帰るかを考えなければならなかった。 北海道は当然本州とは海で隔てられており、本州に渡るには船に乗るしかない。 最初はここから函館まで行って青森に渡り、自走で東京まで行くしかないのか?と思ったが、フェリーの時刻表を見てみると、当日の夜に苫小牧から仙台行きのフェリーが出ているのに気がついた。 電話をしてみると、席はまだ空いているとの事。 しかしここから苫小牧まで距離にして約200km。 時間ははっきり覚えていないが、出港まで残り4~5時間くらいしかなく、ぎりぎり間に合うかどうかという時間だった。 しかし迷っていても仕方なく、他に選択肢もないので、船の予約を済ませて一路苫小牧を目指してバイクを走らせていく事にした。 ちょうどこの日の数日後に、天馬街道と呼ばれる国道236号線が開通して、襟裳岬の方を通らず内陸をショートカットしていく道ができたのだが、当時その道はなく(地図に載っていなかったので存在も知らず、2年後に通った時は驚いた記憶がある)、どうしても海岸線沿いに走っていかなければならない。 この襟裳岬に向かう太平洋沿いの道は、「黄金道路」と呼ばれ、海と険しい岩壁の合い間につくられた道のため、黄金を敷き詰めたくらいの金を投入したという由来がある。 普通の北海道の道であれば、信号もないのでほとんど止まることなく距離を稼げるのだが、この道は道幅も狭く、所々工事をしていて片側交互通行になっている箇所があり、通り抜けるのに非常に時間がかかってしまった。 そこから苫小牧までの200km、かなり無理な運転をして追い抜きなどもしながら、なんとかフェリーの出航前に苫小牧港に到着することができ、やっと一安心する事ができた。 今考えても今までのバイク人生であれ程無茶な運転はした事は無く、一つ間違えば事故を起こしかねないような状況だったかもしれない。 バイクをフェリーに載せて、2等船室へと乗り込み荷物を降ろすと、同室には自分と同じライダーが何人かおり、その中の一人が、「あっちで飲むから、一緒にどう?」と誘ってくれた。 北海道を旅するライダー達は、非常に連帯感が強く、道ですれ違えば必ずといっていい程お互いすれ違いざまにピースサインを交わし、どこかバイクを止めた時にライダーを見かければ言葉を交わし、キャンプ場では毎晩誰かしらと一緒に話をする事になる。 部屋を抜けて誘われた場所へ行ってみると、そこには3人が既に酒を飲みながら話をしており、知り合い同士での北海道ツーリングの帰りかと思いきや、3人は自分と同じフェリーに釧路から乗ろうと思っていたところ、同じく欠航の目にあい一緒に苫小牧まで走ってきたのだとか。 なんだ、4人とも同じ境遇だったのか、とそれまでの北海道で走ってきた事など話は尽きない。 船内は多少波が高いのか、ぐわ~んと大きく揺れている。 自分は船は苦手な方で、これだけ揺れていると船酔いになるのではと思っていたのだが、どうもお酒に酔っていると船酔いにならないという事に気がついた。(気のせいかもしれないが・・・) 翌朝仙台港に着くと、船からバイクを降ろし、そこで記念に写真を撮った。 他の皆は仙台から高速に乗っていくが、自分は節約の為と、今まで走った事の無い太平洋沿いの国道を南下して、いわきの辺りまで行こうと思っていたので、ここでお別れだ。 その後10年間に渡って、その内の一人と毎年年賀状のやりとりをしている。 出会ったのはフェリーの中。 一緒に旅したという訳でもなく、一度酒を酌み交わしただけ。 そんな仲でも、毎年この時期になるとあの頃を思い出す。 当時自分が乗っていたのは、XJR400というバイクだったが、彼はその前身のXJ400という旧車にずっと乗リ続けており、来年で25年目になるそうだ。 そして年賀状にはいつもこの言葉が。 「いつかまたどこかで」 そう、旅を続けていれば、またいつかどこかで会えるかもしれない。
by kibunwatabibito
| 2008-12-29 20:48
| 日常
|
Comments(9)
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sakky
at 2008-12-29 23:04
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旅の楽しみでもある、人との出会い。
外国にいる方が人との出会いが感じられると思っていたけど、 そんな出会い方が日本でもあったんですね。 何だか嬉しい気持ちになります。 私も先日、3年前にトルコのバスターミナルで出会った日本人に 3年ぶりに会いました。 mixiがあったからかろうじて繋がっていた感じでしたが、 再会ができて良かった!って思いましたし、 今後も良き友達でいられそうな感じでした(^^)v だからToshiさんも、その友達との再会(旅)ができると良いですね!
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kibunwatabibito at 2008-12-30 10:52
>sakky さん
確かに一人旅をしていると、日本にいるよりも外国の方がそういう出会いって多いのかもしれません。 ただ、バイクに乗っているとライダー同士ある種の連帯感のようなものがあり、北海道は特にですが、それ以外の地でもキャンプ場などでソロツーリスト同士一緒にお酒を飲んだりもします。 元々人付き合いは苦手な方で、気ままな一人旅を好んでするのに、こうやって旅先で人と出会っているのは、なんか不思議な感じです。
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kibunwatabibito at 2008-12-30 13:31
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りょう
at 2008-12-30 17:32
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旅での出会いはいいものですね。
きっとまたどこかで出会えることを信じて。
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yumi
at 2008-12-30 21:40
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すごくいい話でほのぼのしてしまいました(*^-^*)
出会いは旅の醍醐味、再会となるとなお嬉しいですよね。 10年も年賀状とは、ほんとにすごいですね!! それだけ長く繋がっていれば、いつかきっとどこかで会えるかも。
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kibunwatabibito at 2008-12-31 10:30
>りょう さん
日常でのしがらみが無く、純粋に旅を楽しんでいる似たような感覚を持っているもの同士だから、普通の出会いとはまた違うんでしょうね。 >yumi さん 都会人はとかく他人にあまり干渉しない世の中、こうやって旅先で出会えばそんな事も関係なく付き合えるのですけどね。 北海道やニュージーランドでは、旅をしていると偶然にもまた出会ってしまう事が良くあるんですよねぇ。
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hiro
at 2009-01-04 12:46
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バイクの旅は、車とも自転車とも違う高揚感がありますよねー。
自分はSR400で友人と野宿の度にでたものでした。 そんな時のことを思い出しつつ、 久しぶりに走りたくなりました。 まだバイク乗ってます?
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kibunwatabibito at 2009-01-04 23:00
>hiro さん
確かにバイクにはバイクなりの独特の世界がありますよね。 自転車もそうですけど、暑さや寒さ、風を感じながら疾走する所が、辛いと感じるときもあれば、気持ちよいときもあり、感動も大きくなるのでしょうね。 バイク、まだあるにはあるのですが、このところ乗ってないんですよ。。。 |
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